防災意識を持ち歩く『そのまま持ってけBOX』

京都市南区でオフィス用品を中心に取り扱う(株)カスタネットの植木力社長は、

『いつも社会と共鳴する企業を目指す』という企業理念のもと、

東日本大震災の直後から何かできないかという思いから、

被災地へ通い被災者の声を拾い続けました。

被災状況に応じてニーズが違う上に、人間関係ができていないと

被災者の本当の声を聞くことはできないからです。

時間をかけて声を拾い上げていく中で、プライバシーの問題が

被災者の心に傷を残したことに気がつきました。

被災者が『あの恥ずかしい思いは一生忘れることができない』と語った

トイレや着替えの問題を解決したいと『マルチポンチョ』を開発し、

熊本地震の際には6000枚を寄付し大変喜ばれました。

本格的に防災用品の取り扱いを始めると、

従来の防災グッズに様々な問題があることがわかってきました。

被災地では従来備蓄していた防災用品はあまり使用されていません。

そもそも普段使い慣れていないものは非常時にも使いづらいのです。

防災用品には災害発生時にすぐ持ち出す1次防災用品と

避難後に落ち着いてから改めて持ち出す2次防災用品あり、

倉庫に備蓄されているグッズは2次防災用品です。

また1次防災用品として採用されている防災リュックは、

高価な上にデスクに保管場所を確保しにくく、

結局ロッカーなどにしまい込んでしまう人がほとんどです。

そこで開発されたのが紙製品の『そのまま持ってけBOX』です。

A4サイズで引き出しにそのまま入ります。

被災企業が事業再生できるかどうかは、

従業員への被害の程度で大きく異なります。

そのため防災用品は性別、年齢、通勤方法によって

各自がカスタマイズできる仕様になっています。

自分にどのようなグッズが必要なのか考えることは

防災意識の向上にもつながっています。

また同社が取り扱うオフィス用品はもともと防災要素があり、

BOXに入れるものは従来取り扱っている商品も多く含まれるため

幅広いニーズに応えることができています。

そしてBOXは広島の平和記念公園に届けられる折り鶴でできています。

単なる紙のリサイクルではなく『平和への想いをリサイクル』するのです。

鶴を折り紙に戻す作業とBOXにひもを通す作業は

広島と京都の障碍者施設が担っており、

これも同社の企業理念に基づく取り組みです。

植木社長は継続して被災地へ足を運ぶ中で、

日に日に震災の風化を感じています。

『そのまま持ってけBOX』には防災グッズと一緒に

『防災意識も持ち歩いて欲しい』という思いが込められています。

 

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